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2020/01/18

展望台から見る聖書 第一回 聖書を見渡してみよう


 展望台に上ると、その下に広がる街全体を見渡すことができ、街の概略を知ることができます。聖書を街にたとえるなら、66の町々(旧約39巻+新約27巻)から構成される大都市を一つの視点から俯瞰することにより、その大都市を構成している町々をより良く理解することができるようになります。
 聖書の各書巻はそれぞれ著者も執筆された年代も異なり、歴史・詩歌・手紙等、書かれた内容も違います。しかし、一つの視点、すなわち「神によって定められた救い主(キリスト)を通しての人間の救い」という観点から見れば、聖書は驚くほど調和があり、かつ歴史に根ざしたものであることに気づきます。また聖書には極めて多くの人物が登場しますが、中心人物は一人、イエス・キリストです(ルカ24:27)。
 聖書は大きく分けると旧約聖書と新約聖書に分かれます。旧約は紀元前にヘブル語およびアラム語で書かれ、新約は紀元後にギリシャ語で書かれているように大きな違いはありますが、聖書は旧約・新約の二つで一つの書物です。両者は植物の芽(旧約)と花(新約)の関係にたとえることができます。すなわち旧約で与えられた神様の救いの約束のつぼみが、新約において開花し、成就したということです(マタイ5:17,18)。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第二回 創世記


 「人間の救い」という主題は【神】【罪】【救い】という三つのポイントに分けることができます。創世記を三つのポイントにまとめると、以下の通りです。
 (1)【神】は天と地を創造され、人間を創造された(創世記1~2章)。
 (2)人間は自分の意思で【罪】を犯し、堕落した(創世記3章)。
 (3)神は人間に【救い】の約束を与えられた(創世記3:15)。
 この神が人間を救うという約束は、御子イエス・キリストによって実現しました(第一ヨハネ3:8)。
 創世記は神により選ばれた人々(神の選び)について語っています。
 最初の人アダムの子の中でセツが選ばれ、救い主の血筋となりました。セツの子孫からはノアが選ばれ、洪水から救い出されました。ノアの三人の息子の中ではセムが選ばれました(創世記4~11章)。
 セムの子孫の中からはアブラハムが選ばれて神の民イスラエルの先祖となりました(創世記12:1~3)。このアブラハムからイスラエルの歴史が始まり、それ以前(創世記1~11章)は創世記の前置きと見ることができます。また聖書は、アブラハムが全人類に救いをもたらす福音を最初に聞いた人であると語っています(ガラテヤ3:8)。
 アブラハムの子ではイサクが選ばれ、イサクの子ではヤコブが選ばれ、イスラエル十二部族の祖となります。十二部族の中ではユダが選ばれ、王の王であるイエス・キリストの部族となりました(創世記49:10)。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第三回 出エジプト記~申命記


 エジプト時代のイスラエルの民は苦難を経験しましたが、それは神の救いの計画に則ったことでした。ヨセフに招かれてエジプトに入ることで、選ばれた家は飢饉から救われたのです(創世記45:7)。
 エジプトでの苦難は、イスラエルが国家として誕生する「生みの苦しみ」となりました。苦難を通してイスラエルは、①本当の一致団結を得ました。②神の民としての純潔を守りました。③罪の自覚と救いへの渇望を得ました(出エジプト2:23-25)。④神こそ救い主であることを知りました。⑤国民として生活する手段を習得しました。
 イスラエルがエジプトから救われた目的は、神に仕えるため(出エジプト3:12)、また全人類に仕えるため(創世記12:2,3)でした。そのため、神はイスラエルに律法を与えて教育し、神が支配する王国として整えられました(出エジプト19:5)。またイスラエルは神が住まわれる宮殿である幕屋(出エジプト25:8)での礼拝を通して、将来にメシヤによる救いが到来することを教えられました(第一ペテロ1:18-20)。
 レビ記は神への礼拝の作法を教えています(レビ19:2)。民数記は神の救いの計画は人の失敗に妨げられず成就することを教えています(民数記14:20-23)。申命記は神の救いの計画は世代を超えて成就することを教えています(申命記34章)。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第四回 歴史書(ヨシュア記~エステル記)


 神は全人類を救う使命を担わせるため、イスラエルを長い年月をかけて整えられました。イスラエルの歴史は召集(孤立)と派遣(離散)の二つの時代に分けることができます。
 ヨシュア記の時代からソロモン王の時代(第一列王記10章)までは召集の時代です。イスラエルは神の恵みにより国土を与えられ、律法によって教育され、預言者が語った預言によって救いの希望を与えられました。その過程でイスラエルは他の民族からは区別され、孤立していきました。
 ソロモン王の時代(第一列王記11章)からバビロン捕囚の時代(エズラ記~エステル記)までは派遣の時代です。イスラエルは神の御前に悪とされることを行った結果、国家としての力を徐々に失い、度々他国に攻められて敗北し、民が捕囚となって離散していきました。しかし、異教世界に置かれたイスラエルの民はその土地で神に立ち返り、異教徒に福音を伝える世界宣教の端が開かれました。彼らはその土地で現在の教会の前身にあたる会堂(シナゴーグ)に集まり礼拝しました。その後、神の預言の約束通り(ダニエル9:2)イスラエルの民は帰還を果たし、偶像礼拝を捨てて神殿礼拝を回復しました。帰還した民は律法に従って生活することを志し、律法を教える祭司が支配的な立場を占めるようになりました。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第五回 詩書(ヨブ記~雅歌)


 旧約聖書の全39巻を配列順に区分すると、次の四つに分類することができます。①律法(創世記~申命記)、②歴史書(ヨシュア記~エステル記)、③詩書(ヨブ記~雅歌)、④預言書(イザヤ書~マラキ書)。このうちの詩歌書はその文体の性質から、イスラエルの民の心情を表現していると言えます。
 ヨブ記は、正しい人ヨブ(ヨブ1:1)の苦悩を記しており、「なぜ正しい者が悩むのか」を問いかけています。
詩篇はイスラエルの賛美集です。その中には証しがあり、祈りがあり、賛美の言葉があり、さらに人間の救いに関わる預言の言葉も含まれています。
 箴言は、イスラエルの諺集です。イスラエルの長い歴史の中で人々が神に祈りつつ生活し、答えとして得た具体的な生活の知恵がまとめられています。
 伝道者の書は、別名で「伝道の書」、「コヘレトの言葉」とも言われる書巻です。伝道者(伝道1:1)が人生の様々な経験を通して得た答えは、「神を恐れよ、神の命令を守れ」(伝道12:13)ということでした。
 雅歌は、男女の愛を高らかに歌った「歌の中の歌」(雅歌1:1)です。神によって祝福された愛は「死のように強く」、また「大水もその愛を消すことができません」(雅歌8:6,7)。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第六回 預言書(イザヤ書~マラキ書)


 イスラエルの民に神の御言葉を取り次ぎ、伝道者として語ったのが預言者でした。預言者自身は普通の人間と異なりませんでしたが(ヤコブ5:17)、預言者自身の意志からではなく、聖霊により神の御言葉を語りました(第二ペテロ1:21)。ですから、預言者は自分が語った言葉を完全に理解していた訳ではありません(第一ペテロ1:10,11)。
 同じく神に仕えた祭司は、律法の定めに従って宗教儀式を守り行いましたが、しばしばその内実の宗教の生命を失いがちでした。預言者は神からの預言の言葉を語ることにより、形式のみの宗教に火を投じ、その固い殻を金槌で打ち壊す役割を果たしました(エレミヤ23:29)。
 預言者は過去、現在、未来にわたって語っています。過去については、イスラエルの先祖たちに与えられた救いの約束の成就を語っています(ミカ7:20)。現在については、当代の人々に効き目のある言葉、すなわち律法に基づいて彼らの罪を指摘しました(ホセア6:6)。未来については、救いが将来に実現することを語っています(イザヤ9:6,7)。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第七回 旧約聖書と新約聖書の間


 預言書のマラキ書が記された時代以降、新約聖書が記される時代まで聖書の記述は途絶えます。その間の時代は、エステル記に「神」の語が登場しないことに象徴されるように、神の存在が隠されているように感じます。しかし歴史の中に神の御手を見ることができ、神が密かに働かれている時代と言うことができます。
 この間の時代は四つに区分することができます。
 ①ペルシャ時代:バビロニア王国によりイスラエルの南朝、ユダ王国が滅ぼされ、民はバビロンへ捕囚となりました。彼らは神殿での礼拝を失った後、神の御言葉を文字に書き表して信仰を守り、旧約聖書が整えられていきました。その働きを担ったのがエズラ(ネヘミヤ8:1-8)を初めとする律法学者でした。その後、バビロニア王国はペルシャ王国の王クロスによって滅ぼされ、イスラエル人(ユダヤ人)は故国に帰国することができました(第二歴代誌36:22,23)。
 ②ギリシャ時代:ペルシャ王国はマケドニヤの王アレキサンダーによって滅ぼされ、地中海世界はギリシャ人に支配されました。その結果、イスラエルにもギリシャ文化が浸透し、聖書が共通語のギリシャ語に翻訳されました(七十人訳聖書)。またギリシャの世俗的文化に反対してパリサイ人が、迎合してサドカイ人が台頭しました。
 ③アンチオカスの迫害と独立戦争:アレキサンダーの帝国が崩壊した後、世界は混沌に陥りました。エルサレムでも暴動があり、シリヤの王アンチオカス・エピファネスが鎮圧しました。アンチオカスはユダヤ人を殲滅しようと目論見ますが、祭司の一族であったマカベヤ族が反旗を翻し、独立を勝ち取ります。宮きよめの祭り(ヨハネ10:22)この出来事を記念した祭りです。
 ④マカベヤ族の統治:独立を果たした後、マカベヤ族は祭司兼王としてイスラエルを統治します。しかし、国内の内乱や権力闘争で再び混沌に陥り、時の覇者であったローマ帝国により占領されました。その後、帝国の命によりヘロデが王として立てられました。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第八回 新約聖書緒論


 新約聖書も旧約聖書と同様、配列順に四つに区分することができます。旧約聖書も含めて、人間の救いに関連して説明すると以下の通りです。
 旧約聖書は、全人類の救いの準備を担いました。①福音書(マタイ~ヨハネ)は、イエス・キリストにおいて救いが現れたことを示します。②使徒の働きは、キリストの救いを宣教した使徒を初めとする教会の働きを示します。③手紙(ローマ~ユダ)は、キリストの救いの内容を説明しています。④黙示録は、天地の初めより神により計画された救いの完成について示しています。
 福音書、延いては新約聖書の背景となる世界は、福音(救いのメッセージ)のために備えられていました(ガラテヤ4:4)。世界はローマ帝国という一つの統一国家となっていて、その世界の中で平和に、共通語であるギリシャ語によって福音を宣べ伝えることができました。また世界の人々は真理を求め(ヨハネ18:38)、救いを待ち望んでいました(マタイ2:2)。
 また福音はこの世界のために与えられたものでした。初めにキリストは使徒たちに福音宣教を委ねられました(ヨハネ15:27)。新約聖書は使徒たちが「見たこと、聞いたことを」伝えるために書かれたものです(第一ヨハネ1:3)。また新約聖書は使徒たちが語った説教を記録しています(使徒10:36-43)。ですから新約聖書は「キリストの福音を伝えるための使徒による記録」であるということができます。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第九回 福音書(マタイ~ヨハネ)


 新約聖書の最初の部分に収められている福音書は、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの四つです。そのうちマタイ、マルコ、ルカは宣教という共通の目的があるので共観福音書と言われています。以下にそれぞれの福音書の特徴を説明します。
 ①マタイ:使徒マタイがまとめた記録。預言により約束された救い主を強調しているため、ユダヤ人的福音と言われています。
 ②マルコ:使徒ペテロが語った説教をその助手マルコがまとめた記録。勝利者であるキリストを強調しているため、ローマ人的福音と言われています。
 ③ルカ:使徒パウロの助手ルカがまとめた記録。完全な人間としてのキリストを強調しているため、ギリシャ人的福音と言われています。
 ④ヨハネ:上記三福音書を踏まえ、使徒ヨハネが独自にまとめた記録。神の御子としてのキリストを強調しており、クリスチャンに対し福音の本質を説明しています。
 福音書はすべて、キリストの生涯を本筋として語っています。キリストは宣教の生涯に入る前、三十年間の準備期間を過ごされました(ルカ3:23)。キリストの宣教活動の期間は、ヨハネ伝に記された四回の過越の祭り(2:13、5:1、6:4、11:55)を根拠として約三年半であったと言われています。福音書の最後に、圧倒的な記述の分量がキリストの福音の根本である「十字架」と「復活」に割かれています。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第一〇回 使徒の働き


 使徒の働きには、教会の誕生とその成長についての歴史が書かれています。その歴史はキリストが予告した通り(ルカ24:46-49)に進展しました。①キリストが昇天し、世界宣教の準備が整う(使徒1章)。②キリストの弟子たちに聖霊が降り、世界宣教の力を受ける(使徒2章)。③エルサレムから世界に向けて福音が宣べ伝えられる(使徒2章以降)。
 使徒の働きは二人の人物、ペテロとパウロ(ガラテヤ2:8)を中心として記述されています。ペテロはエルサレムを中心として宣教し、主にユダヤ人への使徒として活動しました(使徒1~12章)。パウロはペテロたちの宣教を引き継ぎ、ユダヤ人以外の国民(異邦人)への使徒として世界中を巡って宣教しました(使徒13~28章)。
 使徒の働きの理解の鍵となる聖句は使徒1:8で、その御言葉の通りに宣教が進展していきました。「聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤ(使徒1~7章)とサマリヤの全土(使徒8~12章)、および地の果てにまで(使徒13~28章)、わたしの証人となります。」

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第一一回 手紙(ローマ~ユダ)


 使徒たちを初めとする福音宣教の結果、世界中に教会が誕生しました。しばらくした後、これらの教会に集う多くのクリスチャンが現実の生活に信仰を適用するために、教育が必要となりました。新約聖書の手紙はこれらの教会の現実的な問題に対処するため書かれました。
 手紙は福音書に示されたキリストの福音を説明しています。福音書に示されたキリストの罪のない生涯に従い(エペソ4:22-24)、いかにしてキリストのようなきよい性質となるかを説明しています(ガラテヤ5:22-25)。
 手紙はキリストの教えを説明しています。その教えは信仰的であるとともに実際的です。救いを得る手段は信仰のみである(ローマ3:28)ことを語ると共に、信仰は現実的な行動がなければ死んだものである(ヤコブ2:26)とも語っています。
 最初の教会の時代、その時代から既に間違った教えがはびこっていました。ユダヤ人から出た律法尊重主義(ガラテヤ書参照)、異邦人から出た道徳的無秩序(ユダ書参照)等です。そのため、「聖徒にひとたび伝えられた信仰のために戦うよう、あなたがたに勧める手紙を書く必要が生じました。」(ユダ3節)

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社

展望台から見る聖書 第一二回 黙示録


 旧約聖書の最初、創世記から始められた救いの計画は、新約聖書の最後、ヨハネの黙示録で完成します。
 黙示録は、使徒ヨハネが迫害により流刑とされたパトモスという島で見た神の幻を記録したものです(黙示録1:9)。当時の世界はローマ帝国の支配下にあり、多くのクリスチャンがヨハネと同様、厳しい迫害を受けていました。黙示録はこれらのクリスチャンたちに宛てて書かれました。その内容は、キリストがありとあらゆる反対を押しのけて最終的な勝利を得る(黙示録1:7)ことを示すものであり、クリスチャンたちに励ましを与えるものでした。
 黙示録の性質をいくつか挙げることができます。①力の書:見えない世界の力が示され、神は御国のために諸勢力を治められる。②御座の書:天の御座が示され、神がまことの支配者であられ、神に従う者に支配が任される。③冠の書:王の王であるキリストの冠が示され、キリストに従う者に冠が与えられる。④戦いの書:終わりの時代にキリストと反キリストとの戦いがある。⑤勝利の書:キリストは最後の戦いに勝利を収められる。⑥救いの書:神の救いの計画の中心としてほふられた小羊(キリスト)が示され、聖徒は小羊の血によってあがなわれ、救いの勝利を得る。

参考図書:マイヤー・パールマン著『展望台から見る聖書』福音出版社