ヨハネ12章3節をお読みします。
その時、マリヤは高価で純粋なナルドの香油一斤を持ってきて、イエスの足にぬり、自分の髪の毛でそれをふいた。すると、香油のかおりが家にいっぱいになった。
イエス・キリストはマルタの家で夕食の接待を受けていました。マルタには妹のマリヤと弟のラザロがいました。ラザロは死んだ後、キリストによってよみがえらされた奇跡を体験した人でした(ヨハネ11章)。彼らはキリストと親しく交流する間柄でした。
その日、マリヤは高価な香油を持ってきて、キリストの足に注ぎかけました。彼らのいた家には香油のかぐわしいかおりとともに、非常な驚きも広がりました。マリヤが注ぎだした香油は、彼女の全財産に匹敵する価値があるものでしたが、それを彼女は惜しげもなく注ぎだしたからです。
しかし、マリヤにとっては高価な香油を使い果たしたこと以上の深い意味がありました。それは、キリストとの家族ぐるみの深い関係から理解すべきことであり、マリヤの感謝の気持ちはお金では決して表すことのできないものだからです。その感謝の思いを、マリヤはあえてキリストの足に注ぎだしました。この足が、キリストの良き言葉と良き業をマリヤの一家にもたらしたものであったからです(ローマ10章15節)。
それから六日後、キリストはマリヤの香油のかおりを携えて十字架につきました。マリヤが感謝したキリストの足取りは彼らの元に留まることなく、全人類のために歩き出したのでした。マリヤの香油はキリストの救いの業のはなむけとして確かに用いられたのでした。
お祈りいたしましょう。
天の父なる神様。キリストの十字架の苦しみを覚えるこの受難の時期、私たちは世界中の人々とともに苦しみを覚えています。今この時、私たちはマリヤが見出だしたように、キリストのうちに幸いを見出だすことができますように。キリストの十字架のうちに、私たちの安らぎを見出だすことができますように。
イエス・キリストのお名前によって祈ります。アーメン。
(日本聖書協会『聖書 口語訳』1955年版)