「しかし、もう隠しきれなくなったので、パピルスで編んだかごを取り、
それにアスファルトと樹脂とを塗って、子をその中に入れ、
これをナイル川の岸の葦の中においた。」(出エジプト2章3節)
パピルスは古代エジプトのナイル川のほとりに自然に生えていた植物です。後の時代には様々な用途のために栽培されるようになりました。古代の世界では紙の原料となったほか、靴や舟の材料としても用いられました。パピルスは人間の生活を支える大切な植物でした。
エジプトに寄留していたイスラエル人は弾圧を受けて苦しんでいました(出エジプト1章)。とある夫婦はわが子をパピルス製のかごに入れて、ナイル川の葦の茂みの中に隠しました。この子は弾圧のために殺さなければなりませんでしたが、両親はこの子が生きのびることができる望みを託して、パピルスのかごに隠したのです。
彼らの願いはかなえられました。この子はエジプトの王様の娘に拾われて、モーセ(引き出す)という名前をつけられて成長することができました(出エジプト2章1~10節)。
(日本聖書協会『聖書 口語訳』1955年版)